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2005年4月25日 (月曜日)

きちんとした英語の発音とは、どういうものなのか

テレビのおかげで人様の英語をそのまま聞く機会が増えているわけですが、知識人とされる方々の英語のお粗末さにはがっかりします。字幕翻訳の大家だとか、テレビや新聞によく登場する経済評論家の話す英語は、外国人による日本人一般の英語力に対する評価を落とすという意味で国辱ものです。テレビで情けない英語を披露したりすると、出身校の話になり、そこの英語力の話になってしまうのと同じです。

こういった立場の人が英語を口にすれば、日本人の英語はこうなのかと思われるに決まっているのですから、それを意識して、発音を矯正し、少なくとも聞くに堪えない英語から脱する責任を負っているのに、それを怠っています。社会的地位の高い人間は、その地位にあるがゆえに、われわれ平民の何倍もの努力ないし犠牲を払う義務を負っていることを指して、英語では、noblesse oblige(見てのとおり元はフランス語)と言いますが、わが国の偉い人たちの話す英語に関しては、こうした義務が果たされていません。指導的立場にある人に当然期待される、鍛錬ないし自己犠牲のレベルの高さを見て取れないということです。

この点、皇室の方々の英語は、これなら恥ずかしくない、このぐらいでなければと思わせてくれ、一国民として「どうだ、日本の皇室は。すごいだろう」という気持ちにさせてくれます。努力すればここまで行けるという、いいお手本です。ことのついでに言うと、わが国の外交官の話す英語は、親がやはり外交官で、海外でもきちんとした教育を受けたという人を除くと、おおかた格好よくありません。留学はさせてもらえるけれど、別段、発音の勉強を義務づけられるわけではないからです。

ところで、こんなふうに言っていると、自分の話す英語は素晴らしいけれど、向うはそうではないと言っているように聞こえるかも知れません。しかし、そうではありません。向うが水準に達していないと言っているだけです。それでは、何をもって水準とするのかということになります。答えは、「音としての英語」がどういうものかを体得した上で、それに即して話すことです。となると、今度は「音としての英語」とはなんぞやということになりますが、それは、古来、rhythm, stress and intonationと相場が決まっています。ネットで検索すると、このフレーズが常にこのままの形で使われているわけで、このことからも英語の世界の常識であることを見て取れます。

英語の本体は音です。音を通じてのコミュニケーションの方がいわば本筋であることは、(本当は英語を話せないヒスパニックが多いので乱暴な数字ですが)英語で生活しているアメリカ人の5人の1人が文盲だという事実が何よりの証拠です。穴居生活をしていた文字なき原始の人々と何ら変わらないのですが、それでいいのです。音で意思疎通さえできれば。もちろん、読み書きは重要な営みですが、話したり聞いたりすることが先であるのに決まっています。

音としての英語を支えるrhythm, stress and intonationで言う、rhythmは手拍子をとるときの、あの拍子のことです。拍子をとりながらoneからtenまでは10拍で言えなければなりません。それが英語の発音の第一歩です。7つまりsevenをse-venと2音節あるかのように発音するとリズムに乗れなくなってしまいます。発音上は、sevnなのです。また、英語圏の子供が歌わされるABCの歌の最大の「難所」はh-i-j-kのあとに来るl-m-n-o-pの下りです。この部分も、さっきのseven同様、一拍の中に収めなければなりません。手を振りながら、3拍でl-m-n-o-pを3回言えるまで繰り返せるようになって、初めて英語発音コースの出発点に立てたことになります。ちなみに、日本人歌手で英語の歌になると、途端に調子がおかしくなる人がいますが、あれは、余計な音節が頭に入っているからです。

次にstressは、強勢と訳すようですが、単語レベルとフレーズレベルのstress(これも1音節で、su-to-re-suという4音節ではありません)があります。単語レベルでのstressとは、 introductoryでのducの部分のように、そこだけが強く発音される部分です。その部分だけを強調するのですから、前半のintroや後半のtoryの部分は、この単語が正しく発音されている限り、聞こえているか聞こえてないか程度に留まっているはずです。言い換えると、introやtoryの部分が明確に聞こえているようでは、駄目だということです。そもそもintroductoryを一拍に収めるべく、ducの部分を思い切りよく、強く発音しようとする限り、introやtoryの部分まで手が回らないと言うか、音が出るはずがないのです。これも、3拍数えながら、3回繰り返せるようになって初めて英語の音として通用することになります。

最後にフレーズレベルでのstressというのは、あるフレーズつまり意味が通じるひとまとまりの単語の中で、最も強く発音されるポイントのことです。初対面の相手に、「私、XYZ 社の者です」と自己紹介する場合、英語では、「何々社から参りました」という形になり、I'm from XYZ Corporation.と言いますが、この場合、stressはXYZ Corporation全体(正確にはXYZが主で、Corporationの部分が従)にかかり、fromはほとんど聞こえないのが正しい姿です。単語レベルでも同じですが、stressのかかっている部分が正しく発音されていると、主たる部分に発音のエネルギーが集中される結果、従たる部分にまでエネルギーが回らず(と言うか、回してはいけないのです)、この結果、あまり聞こえなくなります。こういう視点から英語を捉えると、「アイ アム フロム 何とかコーポレーション」と、カタカナを使って頭で理解しようとすると、音節数は無茶苦茶で、強弱もわからず、まるでお話にならないことがよくわかります。使える英語は頭や目から入ってくるものではなく、スポーツや自動車の運転と同様、体でおぼえるものです。スキルなのです。

イントネーションへと話を進めたいものの、きょうは午後、二コマある授業の準備があるので、別の回に譲らせていただきます。次回は、まとめとして、何かの例文を取り上げて、もう一度rhythm, stress and intonationを振り返るようなことができればとも思っています。

しかし、それにしても、どうして学校教育で子供たちこういったことを教えてくれないんでしょう。国際化、国際化と騒いで、「英語が使える日本人」を打ち出した文部科学省も、ハンバーガーショップでの使う言い回しより、こちらの方が根本的な問題であることに目を向けるべきです。Rhythm, stress and intonationは、50年後も変わらない英語の基本原理なのに、50年後にハンバーガーショップがあるかなどわからないんですから。

なお、英語にはうるさい方が熱心にこのブログを読んでくださっていると聞いては緊張し、学生から「ためになる」と言われてはホッとするという具合で(そう言えば、誰も面白いとは言ってくださらないのが気になります)、いろいろな意味でブログを始めてよかったことだと思っていますので、本業に支障のない範囲で頑張ります。

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