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2005年4月26日 (火曜日)

きちんとした英語の発音とは、どういうものなのか (続)

教員室で出勤簿にサインしているときに、ふと隣を見たら、あのY弁護士。1年先輩に当たる方で、大学生だったときから存じあげてますから、30年以上のつきあいになります。TVのワイドショーのたぐいによく出演しているし、パーティーで会えば、やはりテレビに出ているとかいうケバい女医と一緒で、こっちとは大違い。うらやましい限りです。ま、あちらはいつもアルマーニのスーツだし、二枚目俳優のようなマスクで、背も高いと来ていますから、わが身と比べるのは不遜というものでしょう。それはさておき、その派手好きの大弁護士がなぜか地味に非常勤講師もやっているというので、互いに受け持っているクラスの様子などを立ち話。その中で出てきたのが近頃の学生の優秀さ、熱心さ。とうてい、われわれの時代の比ではないということで意見が一致しました(二人とも酒とバラの日々で、授業なんか出やしなかったのです)。ところが、それほど優秀な学生でも、気の毒なことに英語の発音となると、まるで駄目なものです。

母校でビジネス英語を教えるようになって10年以上経ちますが、ある時期を境に、学生の発音がまるで駄目になってしまいました。調べてないので何とも言えませんが、きっと学校教育のカリキュラムが変わって、英語の授業での発音指導がなくなってしまったのでしょう。発音が駄目と言っているのは、こういうことです。The unemployment rate rose for a third consecutive week.(失業率が三週連続で上昇した)を読み上げる場合、あとで説明する通り、「何が」「どうした」「どのように」に当たる部分をそれぞれ、一つの固まりとして言わなければなりませんから、The unemployment rate rose for a thirdと言ってから、そこで息を継ぎ、consecutive weekと言っては、かたまりが崩れているので駄目なのです。ところが、もともとこういった問題意識がないので、適当な所、たいていは息が切れる所ですが、そこで切ってしまうのです。

そもそも、英語を話すときの基本は、最初に息を吸っておいて、意味上のかたまりの境目で心持ち止め、相手に「ここから別の固まりだよ」と合図しながら音程を下げて行くというものであるのに、途中で息を継いだりするものですから、リズムが乱れ、イントネーションが成っていません。これは相手が期待しているルールを無視してメッセージを届けようとしているも同然です。近頃、英語学習者の間で、シャドーイングなるものが流行っているようですが、こういったことを意識してやらない限り、やるだけ無駄です。コツコツやっているとそのうち、いつか報われるという修行の道と違うのです。

私自身は、学校で教えてくれたのか、家庭教師がそう指導してくれたのか、さっぱり憶えていないものの、ともかく、英語を話すときは、階段を降りていくような気持ちでの下降調 falling toneが大原則だと教わりました。一つ一つの意味上のかたまりが階段の各ステップに当たるという発想です。英語では、要するにWHO+WHATを中心に、そのあと必要に応じてWHERE, WHEN, HOWに関わる情報をくっつけて、相手に伝えたいメッセージを作りますから、対応する部分が終わるつど、呼気を心持ち止めることで相手に「どう?わかった?ただいまのがWHOですよ」と合図しているようなものです。相手は自分の方から話すときもこの「法則」に従っていますから、主語を構成する名詞または名詞句が終わったところで、「おっ、次はBE動詞かそれ以外の一般動詞が来るな」と、心の準備ができます。前置詞句、例えば、in the past, in the futureなども、その直前でちょっと間を置いて「区切り線」を入れてから、すっと一息で言い切ることになります。in theのあと、futureの前で息を継いだりしたら台無しです。何であれ、ここでも聞いている方は、区切り線に続いて前置詞が出てくるので、ああ前置詞句だと備えができ、聞き終わったところで、瞬時に、今のは時間を表す副詞用法の前置詞句だなと判断しているのです。こう書くと何かすごい技を互いに繰り出しているように聞こえますが、英語を話している人間は、こんなことは意識せず、自然にこなしています。認知心理学の人たちがさかんに言う「下位技能の自動化」というやつです。

例文で見ておきましょう。ひとまず意識しておくべきポイントは、意味上の区切りないし固まりを意識すること、固まり自体はひとつながりの単語のように読むこと、そして切れ目で音程を下げていくことです。「うちの服装規定はいかなるタンクトップも認めません」というOur dress code rules out any kind of tank tops.の場合、最初に息を吸っておいてから呼気に乗せて、まず、Our dress codeと言い終わったところで、区切りを入れます。このとき、相手に一つの固まりであることを伝えるため、書いた場合に表示されるときのスペースを発音上は無視して、いわば詰めて読みます。Ourdresscodeとなります。この固まりを言い終わったところでわずかな間を置きます。次にほんの少々音程を下げて、rulesoutと言ってから、また間を置き、かつ、若干音程を下げて、anykindoftanktopの部分を言って終わりです。これを4拍で言います(dress, out, kind, tankの4カ所にstressを置くということです)。まとめると、(1)意味上の固まりを一単語のように一息で読みながら、(2)区切りが来るつど一段ずつ音程を下げていき、(3)一番大事なポイントつまりstressがいくつ置かれるかに応じて決まる拍数に乗せて、話すということになります。しかも、これを最初から最後まで予め吸っておいた息でまかなうのが原則です。途中で息を継いだら失敗です。

意味上の固まりを一単語のように読めと言っても、長い場合はどうするんだと思われるでしょうが、一番大事な部分、つまり、それさえ聞こえていればいい部分にstressを置くので、結構、楽なのです。前回、introductoryという単語を例に、ducの所さえ聞こえていればよく、ちゃんと発音している場合は、前後の要素が聞こえなくなるはずだと書きましたが、フレーズの場合も同じです。最後のany kind of tank topsも、kindとtankさえ明確に聞こえていれば用は足りるものです。

結局、英語を話すということは、口頭で情報やリクエストといったメッセージを伝え合うことであり、それは伝統的に形成されてきた、合図の手順に則っているのです。近隣に合図するための土人の太鼓でさえも、強弱、間隔その他の取り決めの上に成り立っているのですから、当然と言えば、当然です。日本語だって、暗黙の了解があるわけで、それは基本的にリズムをつけないということです。外国人が話す日本語のまねがおかしいのは、強弱のリズムがついえているからであり、このこと自体、日本語には聞いてわかるようなリズムがついていないことをよく表しているのではないでしょうか。

以上述べたことを念頭に置きながらご自分の語学CDやテープを聞き直すと、きっと発見があります。ただ、実際は、いい加減なものもあるので、アメリカ英語なら、プロが朗読している文芸もののカセットとかwww.audible.comでダウンロードできるmp3がいいと思っています。イギリスものの場合は、LongmanやCambridge University Pressのものが安心できます。

今回はワンセンテンスの処理のしかたでしたが、機会を改めて、If I were a bird,のような従属節で始まる場合や、S+V, and S+Vといった重文の場合にどう発音するかを取り上げてみようと思っています。

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