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2005年5月14日 (土曜日)

英語の定冠詞の使い方:使いこなすための四つの重要パターン

このブログの5月1日号で「英語の定冠詞の使い方:特定なら定冠詞というのは迷信」というタイトルの記事を書き、どういう場合に定冠詞をつけるのか、いや、つけなければならないのかを説明しました。その中で、定冠詞をつけるための条件について、「特定のモノ・コトを指して」いさえすれば、「特定だ、従って定冠詞だ」ということにはならず、更に、「相手方もそうとわかっている」という条件が要求されるとしましたが、英語で言えば、specific referenceに加えてhearer's knowledgeが求められるということです。ただ、これだけだと、「特定のモノ・コトを指している」という点は比較的簡単にわかるからいいとして、どういう場合に「相手方もそうとわかっている」と言えるのか疑問が残ります。この点については、記事の中で紹介したBrownという研究者が考案した表がひとまず手がかりとなります。しかし、幸い、文法学者たちが長年研究してくれたおかげで、以下の4つのケースは定冠詞をつけるべしということで、上記二つの条件が満たされるケースを類型化してくれていますので、結構これで用が足ります。

1)特殊な形容詞・名詞の場合、例えば形容詞の最上級や序数のときは、誰の目からも「どのX」のことかがはっきりしているという理屈で「特定されている」とされます。

a) 形容詞の最上級など
→ Which way is the shortest? (最短のルートはどれでしょう?)
→ Their offices are on the fourth floor of this five-story block. (彼らのオフィスはこの5階建ての建物の4階にあります) [注記] The unemployment rate fell for a third consecutive month in May.(5月の失業率は3ヶ月連続の低下となった)のように、序数つきの名詞なのに不定冠詞がついているケースがありますが、このthirdは、2番目の月と4番目の月に間にくる、「あの三番目の月」ではなく、ただのanotherという意味なのだと説明されています。

b) 特殊な名詞など
→ the past, the present, the future (過去、現在、未来)
→ the 1940s, the early 1980s (1940年代、1980年代初め)
→ the sky, the earth, the sun, the moon, the ground (空、地球、太陽、月、大地)
→ the last row, the following day, the next day, the above table, the chart below (最後の列、翌日、次の日、上の表、下の表)  [注記]  I'll see you next week.(来週会いましょう)のように、同じnextでも、「ある日の次の日」というふうに順番を意識しながら言うのでなく、単なる時点を指して言うときはtheはつきません。同じ理由で、「先週、彼に会ったよ」と言いたい場合、I saw him the last week.とは言わず、I saw him last week.となります。

2)既に話しの中に出てきているものを再度取りあげるような場合も当事者の間では「どれとわかっている」つまり「特定されて」おり、定冠詞を付けることになります。

We are sorry to receive your letter of May 5, informing us of an error in shipping and handling. The error was due to an incorrect entry in our records which has now been rectified. (5月5日付けのメッセージにて送料に間違いがあったと知り、申し訳ないことだと思っています。この間違いは私どもの記録上に、誤記載があったためでして、記載事項は訂正しておきました) [注記] 可算名詞の場合、不定冠詞をつけるというのは、その名詞が表しているカテゴリーの話として取り上げていることを示しますから、このルールに従って定冠詞をつけるのに失敗すると、相手としては、実に妙な感じを受けるものです。例えば、be208#31の会話例、A: Are you having a dessert? B: I'm afraid I'm full. I'll go without the dessert.というやりとりで、Bさんが、I'll go without a dessert.と答えたりすると、相手の耳には一つのカテゴリーとして扱っているように聞こえますから、誇張して言えば、「デザートという区分に属する食物の代表例を頂戴するのはやめておきます」といった感じになります。これに対して、 I'll go without the dessert.であれば、「(今おっしゃってくださった)デザートはやめておきます」とごく普通の響きになりますから、大違いです。

3)修飾句等が続き、絞りがかかっている場合も、そのことにより「特定され」ます。

I have no idea about the geography of Shikoku. (四国の地理となると皆目見当がつきません)

おもしろいのは、historyのような名詞で、形容詞が前に来るときは、Japanese historyという具合に定冠詞をつけずに使うのに、of Japanという限定句の形だと、定冠詞がついて、the history of Japanとなります。同じことは大学名についても言え、XXX Universityという形式では定冠詞なし、University of XXXという形式のときは、定冠詞ありとなります。ただ、ややこしいのは、イギリスのケンブリッジ大学のウェブサイト、http://www.cam.ac.uk をご覧になるとおわかりのとおり、正式名称はUniversity of Cambridgeだけれど、場合によっては、本人達もCambridge Universityという言い方をすることがある点です。こういったケースでは、正式のレターなどでは、相手の正式名称である、University of XXXという形によることが求められます。

ことのついでに言えば、新聞の名称や企業の名称にtheをつけるか否かは飽くまで本人たちがどうしているかを見る必要があります。例えば、「タイムズ」で通っているイギリスの新聞の正式名称はThe Timesであり、アメリカの経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」もThe Wall Street Journalです。企業の例では、同じCompanyを使っているのに、自動車のフォードがFord Motor Companyであるのに対して、航空機製造のボーイングは、The Boeing Companyであり、いずれも勝手にtheを足したり、引いたりするのはエチケット、いや、ビジネス・プロトコールに反しています。ビジネス・プロトコールに違反するということでは、相手が正式名称として社用箋などで正式名称としてXXX Incorporatedであることを示しているのに、勝手にXXX Inc.と表示するのも同罪です。

ところで、限定句で絞り込まれているときは定冠詞をつけるという、このルールには重要な例外があります。We need to write up a press release for the new product.という言い方に見られるよう、for the new productという限定句がついているのに、the press releaseとせず、a press releaseとしたりするのです。実は、自分でもなぜなんだろうと考えていた時期があるのですが、Marcella FrankのModern English: A Practical Reference Guideの説明を読んで一気に解決しました。この説明によると、普通ならtheをつけるケースとも思えるものの、冠詞ナシまたは不定冠詞で行くべきかのようでもあり、迷う限界事例を左右するのは、第一に、限定句自体がある区分に属するものにつき「それ」と特定するようなものでなく、単に一般的な区分を繰り返している程度のものであるか否か、それと第二に、その限定句を普通の形容詞に言い換えて名詞の前につけたときの語感という二つの要素だというのです。例としては、次の3つが挙っています。

→ Eggs which are carefully packed will not break.(丁寧に梱包された卵はこわれるものではありません)
→ Milk which is pasteurized is safe to drink.(滅菌処理された牛乳は飲んでも安全です)
→ He is a manufacturer of parts used in the automobile industry.(彼は自動車業界が使う部品のメーカーです)

これらは普通なら限定句がついているということで定冠詞theをつけて然るべきだとも思えるのですが、限定句の内容を見ると、例えばEggsの例で言えば、which I packed yesterday with meticulous care(きのう細心の注意を払いながら包装した)といった限定句と異なり、which are carefully packedというのは、一般的な包装のしかたを言っているだけで、ある区分に属するものを抜き出して、絞り込んでいる筋合いのものではありません。また、この例はうしろの限定句をCarefully packed eggs will not break.というふうに、carefullyというありきたりの区分を示す形容詞に変えることができます。こうしたことで、定冠詞がつかないとされるのです。

最初のプレスリリースに戻ってこれを当てはめてみると、for the new productという限定句はついていても、その程度では、new-product press release というカテゴリーを取りあげている域を脱していません。従って、定冠詞をつけることなく、可算名詞を扱うときの原則どおり、不定冠詞をつけることになります。

この例外的扱いにつき場数を踏んで、限定句で絞り込まれているのに、なおも定冠詞がつかないケースを見極められるようになると、もう定冠詞の話は卒業と言っていいぐらいだと思います。

4)当事者間に共通の理解があり、「Xと言えば、あのXに決まっている」という事情がある場合、やはり「特定されている」ということになります。ことの性質上、会話では頻出するパターンです。例えば、ニューヨークにいる人から東京のオフィスに電話があり、成田までの所要時間が話題になれば、以下のようなやりとりになります。ここでは、どの空港のことかが互いにわかっているので、必ずtheをつけます。

A: How far is the airport, I mean, timewise? B: I'd say about two hours to get to the airport from downtown. (A: 空港まではどのぐらいですか?時間的に。B: 都心部から空港までだと2時間ぐらいでしょうか)

以上をまとめますと、定冠詞をつけるための条件は、第一に、特定のモノ・コトを指していること、第二に、相手方もそうとわかっていること、の二つであり、各人が話したり、書いたりするときは、つまり非定型的部分では、このルールによることになるが、その一方で、類型として定型化されている部分があり、その部分については、原則的に定冠詞をつけるということです。

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コメント

いつも迅速・丁寧なご回答、感謝します。内容がよりクリアになりました。ありがとうございました。

投稿: 中村俊輔 | 2005年12月24日 (土曜日) 午後 05時15分

こんにちは。上記「英語の定冠詞の使い方:使いこなすための四つの重要パターン」の3つ目の「修飾句等が続き、絞りがかかっている場合、そのことにより「特定され」」る場合について質問します。他の3つの用例は、「「相手方もそうとわかっている」という条件」が満たされることは本文より明らかです。それでは、「修飾句等が続き、絞りがかかっている場合、そのことにより「特定され」」、ゆえにthe がつく場合も、「相手方もそうとわかっている」ことが前提なのでしょうか?それとも、、「相手方もそうとわかっている」という条件はこの場合は考慮しなくてもよろしいのでしょうか?すみませんが、回答お願いします。

[返信]

まず、この四つの重要パターンは、「特定のモノ・コト」を指しており、「相手もそうとわかっている」ということで theがつくケースを類型化したものです。したがって、修飾句などで絞り込まれている場合は、ひとまずこの類型に当たるという推定が働き、普通、定冠詞をつけます。これが原則と言えます。

しかし、私の理解しているところでは、そして、自分の感覚では、a press release for the new productのように、修飾句の部分を形容詞として前に持って来れるようなケース、つまり、new-product press releaseと言い換えることができるようなケースでは、いまだに「特定のモノ・コト」を指す域に達してはいないということで定冠詞が使えません。上の原則に対する例外ということです

こういったケースでは、カテゴリーを指していることになりますから、カテゴリーを指すときの原則に戻って、可算名詞なら不定冠詞をつけ、不可算名詞なら冠詞ナシで済ますという流れになります。

投稿: 中村 俊輔 | 2005年12月24日 (土曜日) 午前 10時29分

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